経営者の皆さん、資金使途は慎重に!銀行は貸したお金に「色」をつけてます!
金融機関から融資を受けるにあたって、「お金が借りられたら、使いみちなどどうでもいい」と考えている経営者の方はいませんか?
融資を取り上げる場合、金融機関担当者が「貸出稟議書」という書類を作成します。
返済期間や金利、事業内容や返済財源、保証や担保、そして融資により債務者にとってどんなメリットがあるか等を書面で説明し、支店長や本部等の判断を仰ぎます。
その「貸出稟議書」で最も重要な事項は「資金使途」です。
融資したお金が何に使われるのか、です。
通常、事業融資において、資金使途には「運転資金」「設備資金」の2種類があります。
目次
2種類の事業資金の違い~運転資金と設備資金~
運転資金とは?
運転資金は、企業が日常業務遂行において必要な費用です。
従業員の給料や光熱費、広告宣伝費や家賃等があります、
売上金が即現金入金されれば、運転資金は必要ないかもしれません。
通常、売上金は、商習慣により、「掛(かけ)、つけ」での取引であるため、売上の入金が1~3ヶ月先になる場合があります。
一方で、運転資金は毎月発生するため、売上入金を待っていたのでは支払えない場合もあるかもしれません。
そのため、資金ショートを起こさないよう、企業は売上入金とのタイムラグを運転資金として金融機関より借入を行います。
設備資金とは?
設備資金とは、文字通り、企業が事業運営する際に必要な固定資産購入資金です。
例えば、工場の建設資金や機械・商用車などの購入資金などです。
通常、設備資金を銀行から借り入れる際、見積書を提出します。
また、融資の決裁が下り、融資実行後には、購入した証である領収書を提出します。
お金を借りれたらいいんだと考える経営者の考えは?
経営者の中には、設備投資する予定もなく、資金使途を「設備資金」として申し込む経営者がいます。
資金使途が明確に示せない経営者の大半は、会社の資金繰りを経営者の経験やカンによるケースが多いです。
「これくらいあった方がいいから、とりあえずお金を引っ張っておこう」と考えています。
確かに、融資を受ける企業、経営者にとっては金融機関から借入した資金に違いはないのですが、金融機関にとっては大問題です。
なぜなら、先に示した貸出稟議書に、資金使途を明確にしなければならないためです。
運転資金と設備資金とを明確に区別しています。
タイトルにあるように、銀行は貸したお金に「色」をつけて資金を管理しています。
融資実行後に困った案件2題~保証はしません~
私自身、融資に取り組んだ中で、資金使途で困った案件が2件ありました。
リフォーム業者から商用車購入資金の申込、しかし業況悪化で・・・
リフォーム業者から、「商用車を買いたいので借入したいのだけど」と申し出がありました。
信用保証協会に保証を依頼するため、必要書類を準備してもらい、保証協会に提出しました。
信用保証協会とは、中小企業や小規模事業者が、金融機関から事業資金を借り入れる際、その保証人となり、円滑に融資を行う公的機関です。
「車購入は設備資金なので、見積書お願いします」
「わかった」と言って、準備してもらいました。
信用保証協会の審査の結果、承認されることに。
延滞もせずに、順調に返済していたのですが、
「業績低迷で、約定通りの返済が厳しい」と相談があり、元本返済の据置を信用保証協会に相談しました。
信用保証協会から、「車購入の領収書を提出してください」との依頼があり、その旨を経営者に伝えると歯切れが悪く、「実は・・・」と融資のお金を運転資金に使ったことを告白。
信用保証協会に報告すると、「きちんと管理してください」と叱責されました。
ただし、信用保証協会は、元本据置の条件変更には応じてくれました。
経営者に保証協会から叱られた旨を伝えると「申しわけなかった」と謝罪。
「今後気をつけてくださいね、運転資金と設備資金は別物ですので」と伝えました。
その後、1年の元本据置後、約定通りに返済し、融資した資金は無事に完済しました。
飲食業で水回りの改装を言った途端・・・
飲食業(スナック)で水回りの改装資金の依頼があり、融資の実行を行うものの、信用保証協会から保証否認された話です。
取引先から、「水回りの改装資金を融資してほしい」と依頼があり、必要書類を徴求し、信用保証協会へ保証依頼しました。
資金使途が設備資金ですので、見積書を必要書類として添付し提出。
信用保証協会に保証依頼をすると、必ずといっていいほど、申込書に記載されていることについての確認等の電話がかかってきます。
「水回りを・・・」と言った瞬間、信用保証協会担当者が「完了したら新たに保健所から営業許可証を徴求してくださいね」と言われました。
信用保証協会は、許認可を必要とする業種である企業が申し込みを行う場合、信用保証協会は必ず、許認可証の提出を行わねばなりません。提出のない場合、融資の保証を行いません。
飲食業の場合、水回りの改装を行い、完了した場合、所轄の保健所が検査を行い、飲食業経営者は、新たに営業許可申請を行い、認めてもらう必要があります。
今回、保健所から新たな営業許可証を提出することを条件に、信用保証協会から保証を受け、融資を実行しました。
保証条件である新しい営業許可証が必要な旨を伝え、取引先も了解してくれました。
2カ月、3ヶ月と時間が経過するのにもかかわらず、一向に改修工事に取りかかる様子がありません。
現場に言って確認するも、「もうちょっとしたら」とのらりくらりの返事。
半年経過して、私が異動により担当から外れ、後任に注意するように引き継ぎました。
ここからは後任の担当者の話です。
それまで約定通りに返済していたものの、資金繰りが厳しくなり延滞するように。
その時、「融資の資金、他人に貸して返ってこないので返済できない」と、実際の資金使途は転貸資金であったことが判明しました。
信用保証協会に報告すると、新しい営業許可証取得が条件で保証しているので、明らかな資金使途違反に該当するので、信用保証協会は保証を否認することになりました。
金融機関は信用保証協会を利用する理由として、債務者からの回収が不能になった場合、信用保証協会から代わりに返済してもらえるからです。
信用保証協会から保証否認され、回収不能になった場合、金融機関は貸し倒れとなります。
いやな予感は当たるもので、やがて、債務者は自己破産を申請。
融資残高は全額貸し倒れになりました。
融資を受ける時は、運転資金と設備資金とを区別して申し込もう!
金融機関が融資の際、最も重視しているのは「資金使途」です。
同じ金融機関のお金と考えている経営者もいるかもしれませんが、まるで異なる資金として考えています。
実際には色はついていませんが、金融機関は、運転資金と設備資金とを色分けしています。
経営に資金は絶対必要です。ウソ偽りのない資金使途を金融機関担当者に伝え、気持ちよく資金調達を心がけましょう。
大阪府立大学経済学部卒業。
第二地方銀行に勤務し、預金業務、融資業務に従事。
銀行破綻後、消費者金融会社に転籍し、債権回収業務で取り立てを経験。
その後信用組合へ転職し、融資業務、経理、内部監査、審査管理等に従事。
信用組合退職後、ライターとして活動中。資金調達、事業承継、不動産関連記事をメインに執筆。モットーは「お客様の立場に立って」
取得資格 FP2級技能士 AFP 金融内部監査士 簿記2級
趣味はマラソン、楽器演奏。